今回ご紹介するのは、架空の考古学者であるインディアナ・ジョーンズを主人公とした冒険を描く映画『インディ・ジョーンズ シリーズ』のモデルにもなったと言われる人物を描いた映画作品です。
教科書には、たとえば、「●●年に●●発見」 とだけ載るような出来事があった場合でも、たった何文字かの言葉の背景にはたくさんの人たちが関わっていて、お金、時間、エネルギー、批判、嘲笑、論争・・・など、表面に現れてこない事柄も含まれます。
発見者だけの名前が歴史上に語り継がれていきがちだけれど、発見するまでには別の人たちの努力によるものも、かなりあり、発見者がいたときに単に実を結んだ結果の場合もある。
『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』 の主人公は、南米の遺跡発掘ブームのきっかけを作り、古代都市の発見のために家族も犠牲にして命をかけた方で、日本ではあまり知られていない気がしますが、インディアナ・ジョーンズのモデルになったということで名前を聞いたことがあるかもしれません。
個人的には、かなり気に入って繰り返し観てしまいました。
こういう人が実在したということも、忘れてほしくないので、機会があれば是非!
■映画『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』のネタバレなしの簡単なあらすじ
イギリス陸軍のパーシー・フォーセット少佐(チャーリー・ハナム)は、本土から離れた任務が続いていた。
あるとき、国立地理学協会から、ブラジルとボリビアの国境にあるジャングルエリアを地図に描くために調査をするという役をまかせられる。
国境線で揉めるブラジルとボリビアへ測量に行くことを提案され、成功したら勲章ものということで、妻子をおいて単身で南米ボリビアへ。
ボリビアへ調査にいったときに古代遺跡の痕跡を発見し、アマゾンの奥地には古代文明があったと確信するパーシー。
帰国後、地理学協会でその報告を発表するときに、大勢の前で、南米に古代文明が存在していたことを話すも、当時の知識人たちは嘲笑したのだった。
その後、測量に一緒にいった信頼できる部下たちと口ばかりだったが探検家のマレーも率いてジャングルへ。
途中想定外の出来事があり、あともう少し進みたいというパーシーだったが、とうとう食料もたりなくなり、何の手掛かりも得られず帰国する。
その後、開戦となり、ドイツ軍との戦いで負傷してしまったパーシーは、医者から「探検は無理」と言い渡されてしまう。
探検や戦争で家をあけることが多かったパーシーに対して長男のジャックはひどく非難していたが、やがて成長し、りっぱな青年となる。
そのジャックの口からでてきたのは、「お父さんと冒険に行きたい」という言葉だった。
愛する夫と息子を見送る妻の姿。
無事に帰ってきてほしいと願うが・・・・
★詳しいあらすじ★
『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』 あらすじ①
『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』あらすじ②
『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』あらすじ③
『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』あらすじ④
<映画情報>
製作国/公開:2016年 アメリカ
上映時間:141分
原題:The Lost City of Z
監督: ジェームズ・グレイ
脚本:ジェームズ・グレイ
日本劇場公開:2018年
原作本:デヴィッド・グラン『ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え』
■映画『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』の主な登場人物/キャスト/撮影場所
【パーシー・フォーセット】(チャーリー・ハナム/Charlie Hunnam)
英国陸軍のパーシー・フォーセット少佐は、南米ボリビアでの測量を命じられることに。
※チャーリー・ハナム・・・1980年イングランド ニューキャッスル生まれの俳優。
『スター・ウォーズ』シリーズのアナキン・スカイウォーカー役のオーディションを受けており、最終オーディションまで残っていた。
その長身とスタイルの良さで、2005年にエンポリオ・アルマーニの広告モデルを務め、Elle Girl の「top 100 sexiest men」で9位にランクイン。
【ニーナ・フォーセット】(シエナ・ミラー/Sienna Miller)
探検にいくときも、自分も星も航海術も学んだから一緒に行きたいといった奥さん。
ここまでする女性も稀有でしょう。
※シエナ・ミラー・・・1981年アメリカ・ニューヨーク州生まれのモデル・女優・ファッションデザイナー。
モデルとしてキャリアを始め、タンディ・アンダーソンと契約後にコカ・コーラやイタリア版『ヴォーグ』、プラダのモデルとなる。
【ジャック・フォーセット 】(トム・ホランド/Tom Holland)
パーシー・フォーセットの長男。
幻と言われている古代文明都市「z」の発見のために家族を犠牲にしている父親に対して反発していたが・・・
※トム・ホランド・・・1996年生まれのイギリス俳優・声優・モデル
2011年のアニメ『借りぐらしのアリエッティ』のイギリス版『The Borrower Arrietty』では、男の子の「翔」の声優を担当。(日本では「翔」の声は、神木隆之介)
【ヘンリー・コスティン】(ロバート・パティンソン/Robert Pattinson)
ボリビアへ測量に行ったときの隊員の一人で、その後もパーシーの探検に同行している。
※ロバート・パティンソン・・・1986年生まれのイギリスの俳優、モデル、歌手。「最も稼いでいる30歳未満のセレブ」として、2011年6月、経済誌『フォーブス』に掲載されている。
2005年の公開の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のセドリック・ディゴリー役で注目を集める。
2008年の映画『トワイライト?初恋?』の主人公エドワード役。
2014年のアメリカの風刺映画『マップ・トゥ・ザ・スターズ』ではリムジンの運転手で、駆け出しの俳優。脚本家になって世に認められたいと思っているジェローム・フォンタナ役。
【撮影場所】
北アイルランドのベルファストとコロンビアのサンタ・マルタ
■映画『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』の感想(ネタばれ注意!)
1925年に消息不明となったパーシー・フォーセットという実在した英国の元陸軍の探検家の話し。
この映画では、探検家としてのパーシーだけでなく、彼を待っている奥さん、息子との家族関係についても描かれている。
そのため、どれほとパーシー・フォーセットという人物が幻の古代都市の発見に取りつかれてしまったのかも伝わってきますし、一度は奥さんも一緒に行きたいという方だったのいうことは驚きでもありました。
なので、反対しつつも、ちゃんと理解していたのでしょうね。
戦争のときであっても南米のジャングルに思いを馳せていパーシーだったが、ドイツ軍との戦争で負傷し、探検家の道を絶たれてから、あきらめるも、成長した息子のジョンから探検へ行きたいという気持ちを聞かされた場面は、映像もイギリスの田舎の風景らしく、光もつ蚊ってのとても美しい情景で気に入っているシーンです。
自分の息子と再び古代文明都市「Z」を発見するために出発するパーシー。
パーシーの場合は、認められたいための野心、古代都市の金銀財宝に目がくらんだというような欲深さは感じられず、まっすぐな古代都市文明は伝承ではなく、ほんとうにあることを自分で発見したいという強い動機。
そして、探検を通じて友好関係を築いてきた先住民たちを、他の探検家による武器の攻撃からから守りた という気持ち。
こういう気持ちの探検家もちゃんといたということは、とても嬉しいものです。
新聞に『川崎病』と呼ばれる病気を発見した医師の川崎富作さんの記事があり、
この病気を発表したときに、当時の学会の権威とされている人物にそでにされたということがあったそうです。そのとき、苦境に真理は必ず生き残る とむしろ研究への意欲を高めたという(~海堂尊著『日本の医療 この人が動かす』~)
心から真実だと思ったら、周りの人の意見を気にせず、自分の信念を貫いたという主人公のパーシーと、その家族。
映画にとても心が惹かれるのは、そんな心意気なのかもしれません。
ラストは、夫も息子も無事に家に帰ることを祈り、信じ続ける年を重ねた妻のニーナの姿。
無事を信じていたのに、生きて帰ってまた会うことは出来なかったということで、ことさらに辛さが増していく。
この映画を2回目に観たのはちょうど横田めぐみさんのお父さまの横田滋さんがなくなったという訃報を聞いた前日で、この映画と重なってしまったのでした。(ご冥福をお祈りするとともに、母親の横田早紀江さんとは再会できることを切に願っています。)
パーシーの奥さんのニーナの「心が痛い」という言葉が耳から離れません。
私たちが想像する辛さ、悲しみをはるかに超えているのでしょう。
観終わったあとは、パーシーとその息子のジョン、そして奥さんニーナの気持ちを考えると眠れなくなってしまうかもしれませんので、個人的には、寝る前に観る映画としてはお勧めしませんが、一度は観てほしいなと思っています。
ラストが悲しいため、少し時間をおいてから、心を落ち着けて繰り返し観ていますが、見るたびに、丁寧に作り上げられた素晴らしい作品ということがわかります。
■映画『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』のタイトル評
映画のタイトルにある「Z」とは、主人公のパーシー・フォーセットが南米のジャングルに存在すると信じていた古代の失われた文明都市の名前ですが、この「Z」(ゼット)がはいっているため、タイトルだけを目にしときは、フィクションだと思いがち。
もしかしたら、アニメの「マジンガーz」 というzが潜在意識に刷り込まれているためかも・・・(笑)
実在した人物を描いたということが、はっきりわかるような工夫があれば・・・と思います。
※参考※
映画の原作となる『ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え』(NHK出版)の本の帯には、主演ブラッド・ピットとありますが、以下のようないきさつがありましたので、参考までに。
製作準備期間が6年もの長きに渡ったため、キャスティングは複数回の変更を余儀なくされた。当初の予定では、プランBエンターテインメントの経営者でもあるブラッド・ピットが主演を務める予定だったが、2010年の11月にスケジュールの都合で降板することになった。2013年9月4日、主演にベネディクト・カンバーバッチが起用されるとの報道があった。11月にはロバート・パティンソンの出演が決まった。2015年2月、カンバーバッチもまたスケジュールの都合で降板することになり、その代役としてチャーリー・ハナムが起用されることになった。同月にはシエナ・ミラーの出演も決まった。